【我楽多宗(がらくたしゅう) 平凡寺さん】
私の覚えている平凡寺さん(本名 三田林蔵)は、細面で眼鏡の奥に、鋭い眼光のおじいさんでした。
耳が不自由で、話は専ら筆談でした。
夫人とは手の平に、人さし指でコチョコチョと書いて、それで意思が通じていたようです。
趣味の集まり(我楽多宗)の他に占いもしておられ、筮竹(ぜいちく)のような物や、むつかしそうな書物が机の上にいつもあったと思いました。
父(目呂二)と一緒にお邪魔すると、中二階のような天井の低いお部屋に、ところせましと、あらゆる物が置かれていました。
うす暗いお部屋に、びっくりするような物々、見ちゃいけないもの(エロ・グロ)を目にした感じでした。
見た目には怖いおじいさんのようでしたが、実はやさしかったと感じたこともありました。
方位・家相などもしておられ、母(すの子)は心酔していて、家を建てるとき相談し、忠告を取り入れ、図面を楽しみながら画いて、それなりの家を建てたようです。
それら全て、筆談で事が始り終り良しだったのが不思議というより、たいしたもんだと思いました。
泉岳寺あたりの大地主で、趣味の会合や、古いものが好きなのかと思うと、新しいこともお好きだったらしく、ローラースケートを最初に履いた方だったそうです。
骨の上に皮をかぶせたような痩身、考え方等、一本芯の通った古武士、というより隠居したお殿様みたいな人でしたが、幼い私にもやさしく可愛がって下さったことも、なつかしく思い出しております。
(K.ソロ)
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